27プール

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27プール

プール

トットちゃんにとって、今日は記念すべき日だった。というのは、生まれて初めて、プールで泳いだのだから。しかも、裸んぼで。

今日の朝のことだった。校長先生が、みんなに言った。

「急に暑くなったから、プールに水を入れようと思うんだ!」 「わーい」 と、みんな、、飛び上がった。一年生のトットちゃん達も、もちろん、 「わーい」

といって、上級生より、もっと、飛び上がった。トモエのプールは、少し細かくなってるポートみたいな形だった。でも、大きくて、とても立派だった、場所は、教室と講堂の、ちょうど、あいだにあった。

トットちゃん達は、授業中も、気になって、何度も電車の窓からプールを見た。水が入っていないときのプールは、枯れた葉っぱの運動場みたいだったけど、水を入り始めると、それは、はっきりと、プールと分かった。

いよいよ、お昼休みになった。みんなが、プールの周りに集まると、校長先生がいった。 「じゃ、体操してから、泳ごうか?」 トットちゃんは考えた。

(よくわかんないけど、普通泳ぐときって、海水着っていうの、着るんじゃないの?もうせん、パパとママと鎌倉にいったとき、海水着とか、浮袋とか、いろんなもの、持っていったんだけど、。今日、持って来るように、って、先生いったかなあ?)

すると校長先生は、トットちゃんの考えていることが、分かったみたいに、こういった。 「水着の心配は、いらないよ。講堂に行ってごらん?」 トットちゃんと他の一年生が走って講堂に行ってみると、もう大きい子供たちが、キャアキャア叫びながら、洋服を脱いでるところだった。そして、ぬぐと、お風呂に入るときと同じようにいていたから、裸になると気持ちがよかった。講堂を出て、階段の上に立つと、もう、校庭では、準備体操が始まっている。トットちゃん達は、はだしで、階段を、駆け下りた。

水泳の先生は、ミヨちゃんのお兄さん、つまり、校長先生の息子で、体操の専門家だった。でも、トモエの先生ではなく、よその大学の水泳の選手で、名前は、学校と同じ、巴さん、

かいすいぎ

といった。トモエさんは、海水着を着ていた。

体操をして、体に水をかけてもらうと、 みんな、「キイー!」とか「ヒャー!」とか、「ワハハハ」なんて、いろんな声を出しながら、プールに、飛び込んだ。トットちゃんも、少し、みんなの入るのを見て、背が立つとわかってから、入ってみた。お風呂は、お湯だけど、プールは、水だった。でも、プールは大きくて、どんなに手を伸ばしても、どこまでも、水だった。

細っこい子も、少しデブの子も、、男の子も女の子も、みんな、生まれたまんまの姿で、笑ったり、悲鳴を上げたり、水にもぐったりした。トットちゃんは、 「プールって、面白くて、気持ちがいい」

と考え、犬のロッキーが、一緒に学校に来られないのを、残念に思った。だって、海水着を着なくてもいい、ってわかったら、きっとロッキーも、プールに入って、泳ぐのにさ。 校長先生が、なぜ、海水着なしに泳がしたか、って言えば、それは別に、規則ではなかった。だから、海水着を持ってきた子は、着てもよかったし、今日みたいに、急に、「泳ごうか?」となった日は、用意もないから、裸でかまわなかった。で、なぜ裸にしたか、と


いえば、「男の子と女の子が、お互いの体の違いを、変な風に詮索するのは、よくないことだ」ということと、「自分の体を無理に、他の人から、隠そうとするのは、自然じゃない」と考えたからだった。 (どんな体も美しいのだ)

と校長先生は、生徒たちに教えたかった。トモエの生徒の中には、泰明ちゃんのように、小児麻痺の子や、背が、とても小さい、というような、ハンディヂャップを持った子も、何人かいたから、裸になって、一緒に遊ぶ、ということが、そういう子供たちの羞恥心を 取り除き、ひいては、劣等意識を持たさないのに役立つのではないか、と、校長先生は、こんなことも考えていたのだった。そして、事実、初めは恥ずかしそうにしていたハンディヂャップを持っている子も、そのうち平気になり、楽しいことのほうが先にたって、「恥ずかしい」なんて気持ちは、いつの間にか、なくなっていた。 それでも、生徒の家族の中には、心配して、「必ず着るように!」といいきかせて、海水着を持ったす家もあった。でも、結局は、トットちゃんみたいに、初めから、(泳ぐのは裸がいい)、と決めた子や、「海水着を忘れた」といって、泳いでいる子を見ると、そのほうがいいみたいで、一緒に裸で泳いでしまって、帰るときに、大騒ぎで、海水着に水をかけたり、ということになるのだった。そんなわけで、トモエの子供たちは、全身、真っ黒に陽焼けしちゃうから、海水着の跡が白く残ってる、ってことは、たいがい、なかった。


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