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「城の崎にて」について 「城の崎にて」は志賀直哉の短編小説だ。1917年5月『白樺』に掲載される。心境小説の代表的な作品と思される。1913年の秋、志賀直哉は電車に後からぶつかれて重傷を負う。主人公は山手線の傷のあと養生のため城崎温泉に滞在している。そこで蜂と鼠といもりの生と死にまつわる状景を目撃する。無関心のまま土に帰する蜂、助からぬことを知りつつ死とあらがう鼠、偶然によるいもりの突然の死だ。この小動物の三つの死の姿をいきいきとした描写して、生きることと死ぬことの意味を自己の体験と重ね合わせ、心境小説として昇華結実させた名作だ。 宿の２階から蜂の巣が見える。死んだ蜂に対して生きている蜂は見向きもせず、忙しそうに動き回る蜂が、足を腹部に折り畳んだまま永遠に動かない蜂の対比がまず描かれる。ここでは主人公は死の静けさといったイメイジに憧れている。私もその近くまで行ったのだと感じている。 次に彼は、死に対して抵抗する鼠の姿を見る。身体に鉄の棒を刺されて川に抙りこまれる一匹の鼠が、どうにかして石垣に登ろうと必死の懸命さを見せる。心ない人々は面白がって鼠に向けて石を投げる。鼠は足がかりを見つけて石垣に登ろうとするが、体勢を動かすと身体に刺さった鉄棒が石垣にぶつかれて、死から逃げようとする彼を冷酷に邪魔をする。主人公は見ているうちに痛ましくなり、その場を立ち去る。私は死んで動かなくなった蜂を見たときに死の静けさに共感できた気持ちに なったはずだが、あの鼠の足掻く姿こそが、死に対して生ける者が取るべき姿なのではないか。その証拠に私の心はこれほど動揺している。 そんなことがあってしばらく、主人公は川への散歩の折に一匹のイモリを目にする。おどろかそうと思って投げた石が、偶然にもイモリに当って、イモリが死んでしまう。ひどい話である。生も死もすべては偶然のものなのだと主人公は考える。そういったものに思いは至るが、しかし自分はまだ生きている側に居る。 この小説は一言でまとめると「『死』をテーマにした私小説」になると私は思う。山手線で電車にぶつかれたけれど九死に一生を得た主人公が城崎温泉に療養に行く。そこで、人知れず死んでいく命、多くの人によっておもしろく思される半分に奪われる命、そして、自分が全く意図せずして奪ってしまった命、それらを描くことによって、読んでいる人にそれぞれ違う『死』のイメージ、『命』のイメージを思い起こさせることに成功している作品だと私は感じる。 志賀直哉の描写が何とも味わいがあるというか、リアルである。彼の文章は彼の心の本当のものを通しての描写であるが故に、読む人の心に染みるのであるようだ。中に出てくる、蜂の死、ネズミの死、イモリの死、これらを見ると、生と死に対する自分なりの考えがあるだろう。 本文来源：https://www.dywdw.cn/af2edc3c5727a5e9856a6163.html
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2023-02-01
